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(令和元年法律第三十三号)
施行日: 令和二年四月一日
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死因究明等推進基本法
令和元年法律第三十三号
死因究明等推進基本法
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、死因究明等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、死因究明等に関する施策の基本となる事項を定め、並びに死因究明等に関する施策に関する推進計画の策定について定めるとともに、死因究明等推進本部を設置すること等により、死因究明等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって安全で安心して暮らせる社会及び生命が尊重され個人の尊厳が保持される社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「死因究明」とは、死亡に係る診断若しくは死体(妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)の検案若しくは解剖又はその検視その他の方法によりその死亡の原因、推定年月日時及び場所等を明らかにすることをいう。
2 この法律において「身元確認」とは、死体の身元を明らかにすることをいう。
3 この法律において「死因究明等」とは、死因究明及び身元確認をいう。
(基本理念)
第三条 死因究明等の推進は、次に掲げる死因究明等に関する基本的認識の下に、死因究明等が地域にかかわらず等しく適切に行われるよう、死因究明等の到達すべき水準を目指し、死因究明等に関する施策について達成すべき目標を定めて、行われるものとする。
一 死因究明が死者の生存していた最後の時点における状況を明らかにするものであることに鑑み、死者及びその遺族等の権利利益を踏まえてこれを適切に行うことが、生命の尊重と個人の尊厳の保持につながるものであること。
二 死因究明の適切な実施が、遺族等の理解を得ること等を通じて人の死亡に起因する紛争を未然に防止し得るものであること。
三 身元確認の適切な実施が、遺族等に死亡の事実を知らせること等を通じて生命の尊重と個人の尊厳の保持につながるものであるとともに、国民生活の安定及び公共の秩序の維持に資するものであること。
四 死因究明等が、医学、歯学等に関する専門的科学的知見に基づいて、診療において得られた情報も活用しつつ、客観的かつ中立公正に行われなければならないものであること。
2 死因究明の推進は、高齢化の進展、子どもを取り巻く環境の変化等の社会情勢の変化を踏まえつつ、死因究明により得られた知見が疾病の予防及び治療をはじめとする公衆衛生の向上及び増進に資する情報として広く活用されることとなるよう、行われるものとする。
3 死因究明の推進は、災害、事故、犯罪、虐待その他の市民生活に危害を及ぼす事象が発生した場合における死因究明がその被害の拡大及び予防可能な死亡である場合における再発の防止その他適切な措置の実施に寄与することとなるよう、行われるものとする。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、死因究明等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、死因究明等に関する施策に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(大学の責務)
第六条 大学は、基本理念にのっとり、大学における死因究明等に関する人材の育成及び研究を自主的かつ積極的に行うよう努めるものとする。
(連携協力)
第七条 国、地方公共団体、大学、医療機関、関係団体、医師、歯科医師その他の死因究明等に関係する者は、死因究明等に関する施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(法制上の措置等)
第八条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告)
第九条 政府は、毎年、国会に、政府が講じた死因究明等に関する施策について報告しなければならない。
第二章 基本的施策
(死因究明等に係る人材の育成等)
第十条 国及び地方公共団体は、死因究明等に関する専門的知識を有する人材を確保することができるよう、医師、歯科医師等の養成課程における死因究明等に関する教育の充実、死因究明等に係る医師、歯科医師等に対する研修その他の死因究明等に係る医師、歯科医師等の人材の育成及び資質の向上並びにその適切な処遇の確保に必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、警察等(警察その他その職員が司法警察職員として死体の取扱いに関する業務を行う機関をいう。以下同じ。)における死因究明等が正確かつ適切に行われるよう、死因究明等に係る業務に従事する警察官、海上保安官及び海上保安官補等の人材の育成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
(死因究明等に関する教育及び研究の拠点の整備)
第十一条 国及び地方公共団体は、死因究明等に関する専門的教育を受けた人材の確保及び研究の蓄積が精度の高い死因究明等の実施にとって不可欠であることに鑑み、大学等における死因究明等に関する教育研究施設の整備及び充実その他の死因究明等に関する教育及び研究の拠点の整備に必要な施策を講ずるものとする。
(死因究明等を行う専門的な機関の全国的な整備)
第十二条 国及び地方公共団体は、死因究明等が地域にかかわらず等しく適切に行われるよう、相互に連携を図りながら協力しつつ、法医学、歯科法医学等に関する知見を活用して死因究明等を行う専門的な機関を全国的に整備するために必要な施策を講ずるものとする。
(警察等における死因究明等の実施体制の充実)
第十三条 国及び地方公共団体は、警察等における死因究明等が正確かつ適切に行われるよう、警察等における死体に係る捜査、検視、死因及び身元を明らかにするための調査等の実施体制の充実に必要な施策を講ずるものとする。
(死体の検案及び解剖等の実施体制の充実)
第十四条 国及び地方公共団体は、医師等による死体の解剖が死因究明を行うための方法として最も有効な方法であることを踏まえつつ、医師等が行う死因究明が正確かつ適切に行われるよう、医師等による死体の検案及び解剖等の実施体制の充実に必要な施策を講ずるものとする。
(死因究明のための死体の科学調査の活用)
第十五条 国及び地方公共団体は、死因究明のための死体の科学調査(死因を明らかにするため死体に対して行う病理学的検査、薬物及び毒物に係る検査、死亡時画像診断(磁気共鳴画像診断装置その他の画像による診断を行うための装置を用いて、死体の内部を撮影して死亡の原因を診断することをいう。以下この条において同じ。)その他の科学的な調査をいう。以下この条において同じ。)の有用性に鑑み、病理学的検査並びに薬物及び毒物に係る検査の実施体制の整備、死因究明に関係する者の間における死亡時画像診断を活用するための連携協力体制の整備その他の死因究明のための死体の科学調査の活用を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(身元確認のための死体の科学調査の充実及び身元確認に係るデータベースの整備)
第十六条 国及び地方公共団体は、身元確認のための死体の科学調査(身元を明らかにするため死体に対して行う遺伝子構造の検査、歯牙の調査その他の科学的な調査をいう。)が大規模な災害時はもとより平時においても極めて重要であることに鑑み、その充実を図るとともに、歯科診療に関する情報の標準化の促進並びに当該標準化されたデータの複製の作成、蓄積及び管理その他の身元確認に係るデータベースの整備に必要な施策を講ずるものとする。
(死因究明により得られた情報の活用及び遺族等に対する説明の促進)
第十七条 国及び地方公共団体は、死因究明等に関する施策の適切な実施に資するよう、死者及びその遺族等の権利利益に配慮しつつ、警察等、法医学に関する専門的な知識経験を有する医師又は歯科医師、診療に従事する医師又は歯科医師、保健師、看護師その他の医療関係者等が死因究明により得られた情報を相互に共有し、及び活用できる体制を構築するために必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、遺族等の心情に十分配慮しつつ、死因究明により得られた情報を適時に、かつ、適切な方法で遺族等に説明することを促進するために必要な施策を講ずるものとする。
(情報の適切な管理)
第十八条 国及び地方公共団体は、死者及びその遺族等の権利利益に配慮して、死因究明等により得られた情報の適切な管理のために必要な施策を講ずるものとする。
第三章 死因究明等推進計画
第十九条 政府は、死因究明等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、死因究明等に関する施策に関する推進計画(以下「死因究明等推進計画」という。)を定めなければならない。
2 死因究明等推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 死因究明等の到達すべき水準、死因究明等の施策に関する大綱その他の基本的な事項
二 死因究明等に関し講ずべき施策
三 前二号に掲げるもののほか、死因究明等に関する施策を推進するために必要な事項
3 死因究明等推進計画に定める前項第二号の施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。
4 厚生労働大臣は、死因究明等推進計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
5 厚生労働大臣は、閣議の決定があったときは、遅滞なく、死因究明等推進計画を公表しなければならない。
6 政府は、死因究明等推進計画の円滑な実施を図るため、その実施に要する経費に関し必要な資金を確保するために必要な措置を講ずるものとする。
7 政府は、死因究明等に関する施策の進捗状況等を踏まえ、三年に一回、死因究明等推進計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。
8 第四項及び第五項の規定は、死因究明等推進計画の変更について準用する。
第四章 死因究明等推進本部
(設置及び所掌事務)
第二十条 厚生労働省に、特別の機関として、死因究明等推進本部(以下「本部」という。)を置く。
2 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 死因究明等推進計画の案を作成すること。
二 死因究明等に関する施策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。
三 前二号に掲げるもののほか、死因究明等に関する施策に関する重要事項について調査審議するとともに、死因究明等に関する施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視すること。
(組織)
第二十一条 本部は、死因究明等推進本部長及び死因究明等推進本部員十人以内をもって組織する。
(死因究明等推進本部長)
第二十二条 本部の長は、死因究明等推進本部長(以下「本部長」という。)とし、厚生労働大臣をもって充てる。
(死因究明等推進本部員)
第二十三条 本部に、死因究明等推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 厚生労働大臣以外の国務大臣のうちから、厚生労働大臣の申出により、内閣総理大臣が指定する者
二 死因究明等に関し優れた識見を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する者
3 前項第二号の本部員は、非常勤とする。
(専門委員)
第二十四条 本部に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。
(幹事)
第二十五条 本部に、幹事を置き、関係行政機関の職員のうちから、厚生労働大臣が任命する。
2 幹事は、本部の所掌事務について、本部長及び本部員を助ける。
(資料提出の要求等)
第二十六条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(本部の運営の在り方)
第二十七条 本部の運営については、第二十三条第二項第二号の本部員の有する知見が積極的に活用され、本部員の間で充実した意見交換が行われることとなるよう、配慮されなければならない。
(事務局)
第二十八条 本部の事務を処理させるため、本部に事務局を置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
3 事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
4 事務局長は、本部長の命を受けて、局務を掌理する。
(政令への委任)
第二十九条 この章に定めるもののほか、本部の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第五章 死因究明等推進地方協議会
第三十条 地方公共団体は、その地域の状況に応じて、死因究明等を行う専門的な機関の整備その他の死因究明等に関する施策の検討を行うとともに、当該施策の実施を推進し、その実施の状況を検証し、及び評価するための死因究明等推進地方協議会を設けるよう努めるものとする。
第六章 医療の提供に関連して死亡した者の死因究明に係る制度
第三十一条 医療の提供に関連して死亡した者の死因究明に係る制度については、別に法律で定めるところによる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、令和二年四月一日から施行する。
(検討)
第二条 国は、この法律の施行後三年を目途として、死因究明等により得られた情報の一元的な集約及び管理を行う体制、子どもが死亡した場合におけるその死亡の原因に関する情報の収集、管理、活用等の仕組み、あるべき死因究明等に関する施策に係る行政組織、法制度等の在り方その他のあるべき死因究明等に係る制度について検討を加えるものとする。
(厚生労働省設置法の一部改正)
第三条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第十六条の二」の下に「―第十六条の四」を加える。
第四条第一項第十六号の次に次の一号を加える。
十六の二 死因究明等推進基本法(令和元年法律第三十三号)第十九条第一項に規定する死因究明等推進計画の策定及び推進に関すること。
第十六条の二の見出しを「(設置)」に改め、同条第一項中「自殺総合対策会議」を「次のとおり」に改め、同項に次のように加える。
死因究明等推進本部
自殺総合対策会議
第十六条の二第二項を削り、第三章第四節中同条の次に次の二条を加える。
(死因究明等推進本部)
第十六条の三 死因究明等推進本部については、死因究明等推進基本法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
(自殺総合対策会議)
第十六条の四 自殺総合対策会議については、自殺対策基本法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
第十八条第一項中「第十七号まで」を「第十六号まで、第十七号」に改める。